友川カズキ(前回2017年7月30日のライヴ評を。予習に代えて)
友川カズキ山口県で四度目のライヴ。いよいよ本日となりました。長門市俵山温泉「温泉閣」にて18時開場19時開演。当日券も出るとのことです。サザエご飯と獺祭があなたを呼んでいます。迷われている方は後悔するまえにぜひ。
前回は一年前、ところを岩国市「ロックカントリー」に移しての初めてのライヴでした。実はちょっとした「事件」がありました。この日を少し振り返ります。
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地元の女性シンガー坂田鏡子をOAに立てた二本立て。坂田はなかなかの個性派で、江戸川乱歩を標榜するおどろおどろしい詩世界は主役を喰うほどのインパクトを放っていました。それゆえに友川がステージに登場した頃にはフロアは皆一様に「満腹感」があったように見えました。序盤は新曲中心のセット、初めての土地ということで固さが見え隠れしました。数曲を歌い終え、MCが一瞬途絶えた瞬間、事件は起きました。
「xxxxx!」
客席後方から放たれたヤジでした。どんな言葉だったかーー今はもう覚えていません。誹謗中傷的なものではありませんでした。
しかし、友川はこれにすかさず反応。「それはどういう意味だい?」。声の主である青年はたじろいだ様子で言葉が返せません。これで事態は収束するかに見えた次の瞬間ーー。今度はバーカウンターに居た中年男性客が「おいっ!この野郎っ!ぶっ飛ばしてやる!」と何故か激昂し、青年めがけて突進。これを止めに入った別の男性客ともみ合いになり、場内は一時騒然としました。友川がステージ上から暴力男を叱り、このピンボールのような衝突事故は収束しました。
その後もヤジ男は時おりヤジを飛ばし、暴力男はそのたびに睨みをきかせるという、緊迫した檻の中に我々は閉じ込められてしまいました。ヤジというよりは茶々を入れるような雰囲気。ヤジ男はああ見えて相当な友川ファンで、本人に構ってほしかったのでしょう。友川もジョークで応え、客席からは引きつった笑いが起こります。
フォークがレベルミュージックだった時代、こんなことは日常茶飯事だったことでしょう。しかし今の時代には刺激が強かったようです。途中退席も目立ちました。消化不良のままライヴは終わり、アンコールとなりました。
友川はいつものように手書きの楽譜をパラパラとめくり「おぉ。これがいい」と一枚を選び出します。「ちあきなおみさんのために書いた曲です」。すぐに拍手が起こります。「夜へ急ぐ人」を演奏するものだと思いきや、流れてきたのは別のメロディでした。
祭りの花を買いに行く
村の鈴木商店へ
木々はさえざえと天にあり
祭りの花を買いに行く
もうひとつのちあきなおみ提供曲「祭りの花を買いに行く」。ファンの間でもこの曲はあまり知られていません。しかし観客の誰もが足を止め、この学童唱歌のように優しく美しい歌を聴き入っていました。この瞬間を逃すまいと体に注入するように。たった一曲で場の空気をガラリと変える。これもまたかつてのフォークミュージックの醍醐味に他なりません。
打ち上げで、友川にこの曲のことを訊ねました。「祭りに花を買いに行く」ではなく、「祭りの花」とはどういう意味がありますか。友川は「いい質問だ」と破顔一笑。この歌のバックボーンを聞かせてくれました。居酒屋の座敷。傍らには先ほどの暴力男が酔いつぶれています。叱られて、嫌われて、なぜこの場に居るのか。不思議な心地よさがいつまでも続きました。今夜はどんなドラマが待っているでしょうか。
いつもの顔 いつもじゃない顔
子供もよそゆきおべべ着て
かごめかごめを唄ってる
祭りの花を買いに行く
上の姉やにはブルースター
チーの姉やには 山ききょう
祖母のミヤには夏小菊
祭りの花を買いに行く
年に一度の無礼講
たいこや笛も鳴りやまず
いずれも浮かれて あから顔
祭りの花を買いに行く
※画像は何故か今日までずっと財布の中にしまっているチケット半券。
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