服部雅人さんインタビュー 後編

■グローブスペックスのスタートは98年。デザイン性の高いアイウェアが世界中から集結した店内はめまいがするほどの輝きを放っていました。アン・バレンタインもそのひとつでした。

ーーアン・バレンタインとの出会いについて詳しく聞かせてください。

服部「出会いは99年です。(ご夫婦で共同オーナーである)アランさんとアンヌさんがIOFT(*年に一度開催される日本最大の国際眼鏡展示会)に出展することが決まった時に、日本でルノアの輸入代理店をしているグローブスペックスにアン・バレンタインを託したいとのオファーがあり実現しました」

ーー最初はトゥールーズ(*フランス南部、スペインとの国境近くの都市)でショップとしてスタートされたそうですね。

服部「そのとおりです。80年代当時、フランスには女性が楽しめるアイウェアがなかったことがブランド立ち上げのきっかけとなったそうです。アンヌさんはもともとアートの素養のある方で『顔をキャンバスにして絵を描くように』とよく言われていました。女性の生き生きした表情を引き出したいという思いが独特なやわらかいデザインを生み出しました。どこにもないものを作りたいという思いは強かったようです」

ーーたしかに。このブランドにしかない個性がたくさんありますね。メタルとプラスチックのコンビネーション、例えばMシリーズ(*1)の精巧な組み合わせは寄木細工のような美しさがあります。

服部「メタル(フレーム)に関しては鯖江の『某老舗メーカー』さんに製造をお願いしています。実はこれには面白いドラマがあったんですよ。当初、別の会社に製造をお願いしていたんですが、アン・バレンタインのデザインを形にするのは非常に難しいことから断られてしまいました。他の会社をあたってみたもののダメで、アンヌさん、アランさん、そして僕の三人は『鯖江シティホテル』で途方に暮れていたんですね。そこへたまたま某老舗メーカーが納会をされていて、社長さんとロビーでばったり。『どうしたんですか?』と聞かれて、実はかくかくしかじかじかでとお話したところ『いまちょうどウチの金型の職人がここに来ていますから!』と。なにしろ納会ですから職人さんも全員がそこにおられて急きょ会議が始まったんですよ。幹部の人たちは酔っ払ってヘベレケになりながら(笑)。こうしてアン・バレンタインのMADE IN JAPANモデルが生まれました。このことはアンヌさんにとっても大切な思い出となったようで、感謝の思いはアンヌさんが引退された今も、現在のメンバーたちによって受け継がれています」

ーーフランス生まれのアートと鯖江の世界一の眼鏡技術。素晴らしい誕生秘話ですね。本国でアン・バレンタインはどんなふうに受け入れられていますか?

服部「まず、アン・バレンタイン には独自のセールス・メソッドがあります。直営店では店頭に商品を一切陳列せずに、お客様と会話を重ねることでその方に最も適したフレームをお出しするというスタイルです。そもそもフランス語は形容詞がとても多いんですね。たとえば『かわいい』にしても、どうかわいいのかを表す言葉があります。言葉による高揚感とカラーへの好奇心。眼鏡選びとは、違う自分探しの旅だとはよく言われますが、想像をはるかに超えた自分に出会えることがアン・バレンタインの最大の魅力です。日本だとどうしても売れるものを作りがちです。過去にあったものをいま掛けることがカッコいいというような。それだと想像は超えないんですよね」

ーー納得です。日本ではどんな人たちに掛けてほしいですか?

服部「特別にオシャレな人ではなく、ふつうの人たちをちょっと素敵にするためのものーー。これは本国でもよく言われる言葉です。もうちょっと明るく見せたい。若く見せたい。そんな思いをかたちにしてくれる眼鏡だと思います」

ーー山口県にはどんなイメージをお持ちですか?メッセージと併せてお願いします。

服部「山口県は偉人が多いからなのか優秀な方が多い印象。私の知っている山口の方はみんな頭が良さそうに見えます。眼鏡もきっと似合う方が多いのではないでしょうか。今回は皆様の想像を超える楽しい眼鏡のお見立てができればと思ってます。お会いすることを楽しみにしています!」


あとがき

服部さんにはじめてお会いしたのは2001年のIOFT(*東京で年に一度開催される世界規模の眼鏡展示会)に於いてでした。当時、私は家業の眼鏡店を自分のアイディアでリニューアルさせることに暗中模索の日々でした。ルノアとアン・バレンタインを擁するグローブスペックスは秘宝の在処に見えました。

まだ青写真さえ描けていないのに、自信満々に商談の席に着きました。結果はーー撃沈でした。眼鏡に懸ける思い、作り手の情熱をユーザーに伝える力、すべてにおいて及第点に達していませんでした。それでも服部さんは私の拙い話を聞いてくださり、最後には熱いエールをくださいました。それから15年後ーー。呆れるほど長い年月を要しましたが、100%オリジナルな発想で、店を自分のカラーに塗り替え、アン・バレンタインを取り扱えることになりました。

二度目となる「リベンジ商談」の席で、服部さんがお話されたメソッドの数々は今も手帳に荒々しい筆跡のまま残っています。家内がアン・バレンタインに一目惚れだったことも大きな力となりました。商品を仕入れる際に「売れそうだから」は一度もなく「好きだから」が唯一の判断基準であることはこれからも変わりないように思います。

今日まで多くのお客様にアン・バレンタインをお買い求めいただきました。心よりお礼申し上げます。「派手過ぎませんか?私に似合っていますか?ほんとうですか?」。不安気だった女性が「娘がとてもいいと言ってくれました」と笑顔で報告していただける瞬間は何物にも代えがたく、心の底から嬉しくなります。アン・バレンタインの特徴として皆さんとても丁寧に眼鏡を使われています。愛着のほどが伝わり、また嬉しくなります。

「眼鏡選びとは、違う自分探しの旅である」。名言です。皆さんぜひ服部さんとお話ししてみてください。まだまだ暑い頃ですがテラスには鍋倉山から心地よい風が吹いています。新しい一日となりますように。


文:奥瀧隆志
イラスト:kozi69

山口県宇部市鵜ノ島の眼鏡・時計の専門店| めがね とけい は おくたき

「めがね とけい は おくたき」は宇部市鵜の島(山口県)の眼鏡・時計店です。「おくたき」は眼鏡と時計の販売を始めて63年。THEO(テオ)アンバレンタイン エフェクターなど眼鏡の量販店にはないヨーロッパの眼鏡を「おくたき」では多数取り揃え。経験に裏打ちされた時計の修理 電池交換 ブレスの調整を承っております。

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