フェアプレイの放棄
ヤクルト村上宗隆選手が本塁打を50本の大台に乗せた頃からある心配が頭をもたげていた。プロ野球シーズン最多記録は同じくヤクルトのバレンティンが13年に記録した60本。当時も今も称賛されることのないこの大記録をメディアがどう扱うのかーー。心配はそのまま現実となった。
64年に王貞治が記録した55本こそが日本記録だとする考え。外国人選手はあくまでも「助っ人」、出来れば記録はご遠慮願いたいという思いが露骨に見える。
現場もそうだ。タフィ・ローズ(大阪近鉄)が01年に王の記録に肉迫した際、敬遠攻めにあったことは今なお記憶に新しい。ローズの55本もバレンティンの60本も「見なかったことにしておこう」ということらしい。
ところ変わって米大リーグではことしも大谷翔平選手が大活躍。「二刀流」として1918年のベーブ・ルース以来となる「同一シーズンでの10本塁打以上と10勝以上の達成」を讃えられた。「大谷は日本人なので参考記録。ベーブ・ルースこそが世界記録」と報じたメディアはひとつもない。ファンからも異論は聞こえて来ない。
いついかなるときもフェアプレイであること。野球の魅力であり、野球の在り方だろう。 「大リーグに追いつき追い越せ」ではじまった日本プロ野球もうすぐ100年の節目のときを迎える。紡いで来た歴史を正しく取り扱う責務がメディアにはある。「王貞治を抜き歴代2位となる大記録」となぜ言えないのだろうか。それでは称賛に値しないだろうか。
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