ライヴ評 平和勝次ショー(全国縦断歌の旅路)@宇部市文化会館

 レコードデビューからことしで41年になるという。平和勝次コンサートを宇部市文化会館で観た(7月23日)。
 なまえよりも曲名のほうが通りがよいかもしれない。「宗右衛門町ブルース」は72年(昭和47年)の大ヒット曲。累計200万枚を売り上げ、今日まで多くの演歌歌手によって歌い継がれる。後期高齢者で賑わうロビー。場違いなところへも出かけたのはひとえにオリジナルシンガー一世一代の歌唱を聴くためである。

 平和勝次は45年(昭和20年)広島県竹原市生まれ。父は浪曲師、母は三味線弾きの芸能一家に育った。15歳のときに大阪の女性浪曲師のもとに預けられ、自身も芸の道を歩みはじめる。
 なかなか本領を発揮できずにいた。浪曲師を五年であきらめギター流しに身を転じる。三曲五百円で盛り場をさまようその日暮らしの日々を送った。
 20歳をとうに過ぎた頃、ひょんなことから吉本興業所属の芸人となる。平和勝一・勝次の漫才コンビで世に出た。しかしここでも芽が出ない。やすしきよしらの活躍を横目に、客もまばらなホールで酔客を相手にギター漫才の日々。浮上のきっかけさえつかめずにいた。

 「もうやめてクニに帰るつもりでした」(平和さん)。「宗右衛門町ブルース」を詞作したのはちょうどその頃だった。宗右衛門町にあるクラブで歌ったところいつになく客席が沸いた。たちまち街中の話題となり芸人仲間とグループを結成、シングル盤を自主制作した。ついには東京・クラウンレコードの目に留まるところとなる。平和勝次とダークホースの名で堂々のレコードデビュー。昭和47年の師走真っ只中だった。


 ここで少し考察を。「宗右衛門町ブルース」を演歌と呼ぶことは正しくない。訳知り顔でこれは浪花のソウルだというのとも違う。戦前から連綿と続く「歌謡ブルース」の系譜を継ぐものであることがまずひとつ。この時代、青江三奈、森進一によって第二の黄金期を迎えていた。ここに割って入ってきたのが「ムードコーラス」だった。内山田洋とクールファイブの登場により新たなウェィヴが巻き起こっていた。
 「歌謡曲が元気な時代だったんです」」(平和さん)。甘いカクテルのようなギター&ホーンサウンドに乗って歌われるブルース。すべてが「いいとこどり」の時代を映したサウンドであることに気づく。
 歌詞に目をやる。とくべつ気の利いたフレーズもなく、むしろおそまつでさえある。ここが宗右衛門町であることを示すものは「いちょう並木」のほかにはどこにもない。それがひとたび曲となると見事にミナミの情景が浮かぶのだからマジックというよりほかない。咽喉を膨らませ大きく発せられる歌は、ブルースでありながら聴き手を鼓舞する応援歌のように胸に響く。希代の名曲といわれる所以がいくつもある。


 コンサートの報告を。昼と夜の二回公演。それぞれ前半は地元のカラオケクラブの発表会、後半が平和勝次ショーという二部構成によって行われる。北は北海道から南は沖縄まで。スタッフ役の奥さまとふたりでワゴン車で全国をまわる生活はことしで13年にもなるという。
 驚くべきことにすべて「入場無料」。経費はすべて平和さんの自己負担である。理由について多くは語られなかったが、高齢者に歌をプレゼントしたいという意志がMCから強く感じられた。ゆえ楽曲のセレクト等々、メインの客層である70代よりもさらにわかりやすいところに設定してある。むろん、そこに不満がなくもないが、ナツメロだけに終わらず新曲を歌う姿勢に好感を持った。

 
 「宗右衛門町ブルース」はオープニングだった。往年の畳み掛けるような歌唱はもはや望むべくもない。しかし68歳の平和勝次もまたいまこのときにしか聴けないと思わせるものだった。マイクを胸元に置き、そこから声量にあわせて位置を変えていく。見事な実力である。
 三番の歌詞につい口ずさむ一節がある。「君にも来るよ/しあわせが」。曇り空が続く私の心がステージから読み取れたのだろうか。こちらへ手を差し出して歌いかけていただいた。歌の力を感じずにいられない素晴らしいコンサートだった。


 
 追記:画像中央は73年リリースの2ndアルバム(レアスタッフ)。小脇に抱えて持参した。半透明のレコードバッグに入れていたにもかかわらず、受付をされていた奥さまは直ぐにそれと気づかれ、「なんとまぁ、ふるいモノを持ってはりますね」とにこやかに笑われた。

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